特定技能「農業」|制度のポイントとは

特定技能「農業」とは、2019年4月に施行された改正出国管理法によって、新しく定義された在留資格です。特定技能「農業」の誕生によって農業でも外国人労働者の受け入れが可能となり、農家の人手不足緩和につながります。

ただし、外国人労働者の受け入れには、さまざまな要件を満たしておかなければなりません。そこで、当記事では、特定技能「農業」制度のポイントについて詳しく紹介します。

特定技能「農業」受入れ可能な人材

特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があります。

特定技能「農業」では、その特定技能1号による受入れが可能です。特定技能1号の場合、最長5年の受入れができるものの、家族は帯同できません。

また、受入れ期間は最長5年です。ただし、最長の5年はあくまでも年間通して雇用する場合のみです。そのため「農閑期に一度帰国させて農繁期に呼ぶ」といったように、半年ごとに業務させる場合、通算で10年間にわたり雇用できます。

よって、特定技能の方が技能実習よりも柔軟に雇用することが可能です。受入れ可能な人材として、他にも以下のようなパターンがあります。

  • 技能実習2号からの移行
  • 海外で技能評価・日本語試験を受ける
  • 留学生から受験する
  • 短期来日で受験する

特定技能の制度内容については法務省のサイトを参考にしてみてください。
参考:特定技能制度 | 出入国在留管理庁

特定技能人材受入れ企業の要件

特定技能人材を受け入れた後は4ヶ月以内に「農業特定技能協議会」に加入し、協議会に必要な協力を行うことが要件として定められています。

加入方法は、農林水産省のホームページから問い合わせて申請するだけです。申請の際は特定技能人材向けの「在留カード交付日」や「在留カード番号」を記入しなければなりません。

そのため、特定技能人材の受け入れが決まり、交付日や番号が判明してからの方がスムーズに申請できます。

特定技能「農業」の試験内容

特定技能「農業」の試験内容として次の2つが挙げられます。

  • 農業技能測定試験
  • 日本語能力試験

特定技能「農業」の在留資格を取得するには、これらの試験に合格しなければなりません。それぞれの試験内容について詳しくみていきましょう。

農業技能測定試験

農業技能測定試験は「畜産」と「耕種」の技能分野に分かれており、試験時間は60分・70問程度で構成されている試験です。学科試験と実技試験、日本語音声のリスニングテストが含まれます。

日本語能力試験

日本能力試験の「N4」に合格するには、業務をある程度こなせる「日常会話レベル」の日本語力が必要です。

外国人向けに日本語の能力を測るテストの「JLPT」によると、その難易度は「基本的な語彙や漢字を使用して記載された一般的な文章を読んで理解できる」や「ある程度ゆっくり話す会話であれば内容をほぼ理解できる」と定義されています。

特定技能人材の雇用形態

特定技能人材の雇用形態として次の2つが挙げられます。

  • 直接雇用
  • 派遣受け入れ

それぞれ詳しくみていきましょう。

直接雇用

直接雇用の場合、技能実習生と労働契約を締結しなければなりません。2000年に農林水産省から出された「農業分野における技能実習移行に伴う留意事項について」では、以下の事項を書面にて交付・明示することが義務付けられています。

  • 労働契約の期間に関する事項
  • 就業の場所、従事すべき業務に関する事項
  • 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、就
  • 業時転換に関する事項
  • 賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。以下同じ。)の決定、計算・
  • 支払の方法、賃金の締切り・支払の時期に関する事項
  • 退職に関する事項

引用:農業分野における技能実習移行に伴う留意事項について

「知らない間に違反していた」といった事態を防ぐためにも、必ず明示しましょう。

派遣受け入れ

農業分野の場合、派遣による外国人人材の雇用が可能です。

ただし、農業分野では農閑期と農繁期があります。そのため、一般企業とは異なり、外国人特定技能生に安定した賃金を支払えない可能性もあります。

また、派遣受け入れを行う場合は「農業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」の要件を満たさなければなりません。さらに、法務省が定義した要件も満たす必要があります。

よって「法律」「労働環境」「人権」という観点から受け入れの体制が整備されていない法人への派遣は難しいと考えるべきでしょう。

まとめ

特定技能「農業」において、受入れが可能な人材としては「特定技能1号」や「技能実習2号からの移行」「留学生」などが挙げられます。これらの人材が特定技能「農業」の試験に合格すれば、農業分野に就労することが可能です。

ただし、外国人労働者を受け入れる企業側も「農業特定技能協議会への入会・協力」といった要件があります。また、雇用形態ごとにも要件や義務が設けられており、いずれも満たしておかなければなりません。

特定技能「農業」の制度を利用する際はポイントや要件などを押さえ、就労環境を整えることが大切です。

こ記事の著者

編集長 岩本信一(福岡県出身

福岡県飯塚市出身、1969年5月14日生まれの53歳。現在は、株式会社グローバルヒューマニー・テック(https://gh-tec.co.jp/)会長。一般財団法人CHIKYUJIN留学生支援機構(https://chikyujin.or.jp/)創業者理事。一般社団法人障がい者自立推進機構(https://paralymart.or.jp/association/)顧問。